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朝の清々しい空気とは裏腹に憂鬱な顔でオレ(蒼井顕人)は廊下を歩いていた。 「ったく。起きれなくなるまで飲むなよなぁ」 ぶつぶつと文句を言いながら、歳にして三つ離れた姉貴の部屋の前に立つ。 「姉貴。そろそろ起きないと会社、遅刻するんじゃないの」 部屋のドアをノックしながら、中の姉貴に呼びかける。そのまま耳を澄ましてしばらく 「おおい、朝だぜ。会社行かなくていいのか。いくら、もうすぐ寿退社するからって遅 ようやく目が覚めたのか、中からくぐもった声が返ってきた。 「んん〜。今日、会社休む〜」 って、いいのかオイ。いや、いい訳はないか。まったく、飲んだ翌日のお約束とは言え、 「あのさ〜、コーヒー持ってきてくんない」 「てめー、いいかがんにしやがれ」という言葉を飲み込み、「ああ、わかったよ」と 階下のキッチンでドリップ式のコーヒーメーカにスイッチを入れたあと、ふと冷蔵庫の コーヒーカップとポカリを持ってキッチンを後に再び階段を上る。 相変わらずぶつぶつとぼやきながら、姉貴の部屋の前に立った。 「コーヒーいれてきたぜ。入っても良いのか」 といいながらドアを開ける。が、すぐに閉めた。姉貴の何も着ていない背中が見えたか 「どうしたの〜」 ガサゴソとなにか着こむような音がする。しばらくして、 「はい、いいわよ〜」 …しかし、いくら弟だからって無防備な格好してるな。白いブラウスからすらりと伸びた …はっ、思わず見とれてしまった。あわてて目をそらす。 クスクスと笑い声が聞こえて、からかった口調で 「あら〜、目に毒だったかしら。えっちな目で見てたわよ〜」 と言いつつ、部屋の真中にあるガラステーブルにおいて部屋を出ようとする。 「え、ポカリ? そっち頂戴」 「そりゃ飲み過ぎた姉貴が悪いんだろーが」と口の中で呟きつつ、素直にポカリの缶を手渡 「ん、どうしたの」 その台詞に苦笑しながら振り返るオレ。さっきと変わらない表情で美味しそうにポカリを飲 「じゃあ…」 ガラステーブルの前にすわり、姉貴のカップに入れたコーヒーをすする。しばらく二人とも 「会社には、連絡したのか」 無言でいる事に、なんとなく耐えられなくなって、ついそんな事を口にした。 「さっき、携帯から連絡入れといた」 急に改まった口調で、姉貴が切り返してきた。こういう時は、あまりろくな話題にならない。 「彼女、いないの」 ぶっ。コーヒカップに口をつけていたため思わずむせた。 「きたないわね〜。はいティッシュ」 それっきり、またお互い黙り込む。なんだ姉貴のヤツ、なに話そうとしてるんだ。訝しがる 「あんたさ…」 やれやれという口調で言われてしまった。ち、お見通しかよ。 「よけーなお世話だ。大体、姉貴には関係無いだろ」 そう言って、ぷいと顔をそむける。我ながら拗ねたガキみたいで可愛くないと思うが、 「あ、姉貴!?」 後頭部の辺りに、薄いブラウス越しに胸の感触を感じる。姉貴にこういうことをされるのも 「顕人ってさ、あたしよりなんでも出来て、他人にも結構優しかったりするけど…」 そういって、姉貴はオレの頬に手を当て自分のほうに顔を向けさせた。いつに無い優しい …チュッ 姉貴は、すっとオレの額に軽く口付けをして、「じゃあね」と言って部屋から出ていった。 オレは誰もいないキッチンに戻って、コーヒーメーカーに残っていた分をカップに注いで 朝の喧騒も大分落ち着いたのか、ただ静かな時間だけがオレの回りを過ぎていく…。さっ …二週間後、式場で幸せそうな姉貴を見ながら、オレは、なんとなくあの日のコーヒーの 「幸せにな。姉貴…」 |
あとがき |
後書きっていうか言い訳再び… 精進(したのか?)の後が見られないかも…。 んで今回のお題はタイトルから見てもわかる様に、ちくわさんのCG(第2弾)です。 何気なく書き始めて3作目ですが、やっぱり読むのと書くのでは大違い。 それでは、またの機会に…(って続くのか!?オイ) 22:24 99/12/28 |