「せんぱい、あけましておめでとうございます」
「おお桜、着物姿で来るとは驚いた」
「へへーん、やっぱり士郎驚いたー」
「おわっ!藤ねえまで晴れ着で来るとは…」
「完璧でしょー、綺麗でしょー、素敵でしょー」
「…そういうことはあまり言わないのが美徳ってもんじゃないのか?桜なんか何も言わないぞ」
「あ、あはは…」
「で、どういう風の吹き回しなんだ?」
「日本人らしく着物でいこうってだけの話。あまり深い意味はないんだけどね」
「桜のそれも自前?」
「藤村先生にいただいたんです、私着物なんか持ってなかったから」
「へえ、藤ねえ桜色の着物なんてよく持ってたね」
「えへへー、いただきものなんだけどねー」
「良く似合ってるよ二人とも」
「ありがとうございますせんぱい」
「当然よう」
「……藤ねえは年明け早々絶好調だな」

「……士郎、ちょっと耳貸して」
「?」
「ここだけの話だからね」
「何だよ」
「これでも荒んでいるのだよ」
「へ?」
「桜ちゃん、何も言わないけどね…」
「何か奥歯に物が挟まったみたいな言い方だな、藤ねえらしくないぞ」
「言い難いことなのよう!」
「耳元で怒鳴るなよっ」
「士郎が悪い」
「…まあいいや。で?」
「桜ちゃんの行動で分かるわよう」
「桜の行動?」
「よく見てなさい。自分の口からはとてもじゃないけど言えないから」
「?」

「せんぱい?私、どこか変ですか?」
「い、いや、全然変じゃない。どちらかというと見惚れていたって感じだよ。似合うな本当に」
「あ、ありがとうございます……」
「……ああ、そういうことか」
「?何の話です?」
「いや、藤ねえがちょっとな」
「?」

「藤ねえ、理解した」
「言わなくてもいいからね、言ったら酷いんだからね!」
「そこまで言うなら言わないけどさ…」
「士郎にこの複雑な乙女心は理解出来ないわよ…」
「確かに理解出来ないけど、桜の胸に罪はないと思うぞ」
「言ったー!禁句言ったー!士郎のばかー!士郎にはお年玉もうあげないんだからーっっ!」



「お年玉なんかくれたこと、一度もないだろ…」





2005.01.19 もりたとおる