前回までの粗筋
唐突に復活した真アサシンと一時の気の迷いから同衾してしまう衛宮士郎。
そこへ内縁の妻、間桐桜が偶然居合わせてしまう。
狂乱状態になった桜は出刃包丁を振り回す。救いようの無い修羅場。
「助けてライダー!!」
悪に泣く弱者の声あらば必ず現われる正義の使者。
そう、その名は仮面ライダー!
いけいけライダー、悪のゴルゴムをやっつけ、ゴボォ!!
「いい加減にしなさい!!」
ぬう、これは卍固めの原形になった逆卍固め。恐ろしいマスターになりましたね、サクラ。
「ごめん。ちょっと予定が取れなくて帰れないわ。」
「残念です、姉さん。」
電話に出ていた桜がとたとたと帰ってきた。
「先輩、姉さん今度の連休帰って来れないそうです。」
「そうか、残念だな。」
目玉焼きにソースをかけながら答える。
「士郎サン、目玉焼きにソースはどうかのう。」
「うるさい。」
「やっぱ、醤油が一番合うと思いますけんのう。」
「黙れ。」
「静かにして下さい。テレビの音が聞こえません。」
「ごめんなさい。」
醤油を取ろうとしたらアサシンと手が触れ合ってしまった。
「あ、・・・。」
気まずそうに手を引っ込める俺達。
「先輩とその間男を殺して私も死にます。」
「それ、コピーした文章だろう桜。」
よし、みっしょんこんぷりーと。
「士郎、アサシンの事でちょっと話しがあります。」
食器を片付け終えたら急にライダーに呼び止められた。
「ここじゃ不味い事か?」
小声で尋ねる。
「はい、土蔵で話しましょう。あそこなら邪魔が入らない。」
ライダーに先導されて土蔵に向かう。
「それで、何だアサシンの事って。」
「彼は、もう長くこの世界に留まることができません。」
「えっ!?」
自分でも驚くほど狼狽した。何時の間にか奴は俺の心の中で大きなウェイトを占めているという事なのか。
「どうゆうことだ?桜の魔力はほぼ無尽量だから魔力切れになんかならないはずだろう?」
「サクラとアサシンの繋がりは弱い。私のように正式に契約したサーヴァントではないから非常に不安定な存在です。いままでは何らかの偶然で具現化する事ができましたが、もう限界でしょう。」
淡々と事実のみを告げるライダー。
そんな、アイツが消える?
「・・・あとどれくらいなんだ?」
「今日中には。」
「あいつはその事を・・・。」
「恐らく知っているでしょう。」
自分が消えるってわかっていてあいつはいつも通りの自分を演じているのか。
「チクショウ、俺あいつが好きだ。」
そう、あいつと初めてあったあの朝から・・・。
「おはよう、桜・・・。」
「おはよう、魔術師殿。」
……。
そこに骸骨の面があった。
「真・アサシン?」
ぎゃあああーーーー!!!!
・・・いや、ちょっと待て。アサシンと初めてあったのはあの朝じゃないし、なんでいきなりそんな結論になるんだ?
「そうですか、それでどうするんですか。」
「今日1日、デートに誘う。」
なんでそうなる。やばい。また不思議空間に巻き込まれている。
「・・・まあ、私は止めませんが。」
とめてくれー!
「ええ、天気じゃのう、士郎さん。」
「・・・ああ。」
「絶好のデート日和じゃのう。」
「・・・ああ。」
「やっぱり、正ヒロインにはデートイベントが必須じゃのう。デートの一つもこなせんようじゃ、ヒロインのクズじゃあ。」
「ああ・・・ぎゃあっ!?」
土蔵のスパナがカキーンと俺の後頭部にヒットした。どうやら尾行られてるらしい。
さて、どこに行くか。
「なあ、アサシンは人間だった頃はどんなことして休日を過ごしてたんだ?」
「そうじゃのう、酒を飲むか、女を抱くか、捕まえた捕虜を拷問するとかかのう。」
全然参考にならなかった。特に一番最後のヤツ。
ともかく黒マントの骸骨の面をした暗殺者の嗜好なんて皆目見当がつかない。
ええい、当たって砕けろだ。
砕けました。
ってゆうかあらゆる店から入店を断られ、あげく警官に職務質問を食らった。
なのに。
「ワシ、ファンシーショップにいきたいのう。」
なんて、おっしゃいやがりました、コイツは。
新都のぬいぐるみ専門店。
男が立ち入る事を許されない女性の聖域。
何が悲しゅうてこんな怪人と・・・。
この場所は、別の誰かと来る場所だと思うのだが。
いや、絶対そうだ。
敵地のど真ん中でダイナマイトを腹に括り付けている状態の俺を尻目に。
「士郎サン、これ可愛いのう。」
インディアンの干し首を嬉しそうに取り上げるアサシン。
この店はどうゆう客層をターゲットにしているんだ。
日も暮れて帰り道につく俺とアサシン。
新都と深山町を結ぶ冬木大橋で夕焼けを眺める。
ここも誰か別のサーヴァントと訪れるべき場所のような気がするのだが。
「綺麗じゃのう。」
インディアンの干し首をぶら下げながら佇む黒マントの骸骨怪人。
どう控えめに見ても邪教の祭司としか見えない。
「士郎サン、姉さんからワシの事・・・。」
「聞いている。」
「そうですか、ワシも長いことこの稼業を続けておりやしたが、そろそろ年貢の納め時のようですのう。」
「・・・アサシン。」
「聖杯もなくなったことですし、ワシみたいな能力いまいちの、マイナーサーヴァントは消えてゆく運命にあるんでしょうなあ。」
アサシンは遠い目で光る川面を眺めていた。
「まあ、そうだな。」
「さて、帰りましょうかのう。後イベントは一つしか残っていないですけんのう。」
イベント?
「濡れ場ですけん。」
ブンブンと頭が千切れる程振る。
たすけてちぇりーぶろっさむ!!
「そこまでです!!」
きたーちぇりーぶろっさむ!!
「雑種が、我が見ていないと思ってこそこそと。不愉快だ。」
話し方が変ですがやっちゃってくださいちぇりーぶろっさむ!!
「マスターには指一本触れさせません!」
アサシンも変だった。
「貴方のマスターは私でしょ!?この裏切り者!!」
「シロウ、後ろに下がっていてください。」
もう展開についていけそうにないなあ。
「ほう、我と戦おうというのか、雑種。」
「言ったはずです。マスターには指一本触れさせないと。」
「ふっ、おもしろい。」
ゴゴゴ・・・と魔力回路を全開にする英雄王・・・もとい桜。
アサシンが身構える。
あの構えは奴の最高の攻撃力を持つ右腕の力を解放するものだ。
「ゲート・オブ・バビロン!」
パチンと指を鳴らす桜。背後から実体化するライダー。
のりのりですな桜さん。
「最後に聞いておいてやろう。大人しく我に降る気はないか?」
「くどいっ!騎士の誇りにかけて私は最後まで戦う!」
いつから騎士に。
「ならば、死ねっ!!」
くわっと目を見開く桜。
それを合図にライダーが血で魔方陣を造る。
宝具の中でもトップクラスの威力を誇るベルレフォーンの予備動作だ。
アサシンの心臓を抉る呪いの腕が風を切って走る!
ライダーの白き天馬が光輝き唸りをあげる!
勝負は一瞬でついた。
やはり宝具のレベルが全然違ったようでアサシンは地面に転がっている。
ここでかけよると面倒なことになりそうなので静観する。
「くっ・・・!」
立つな、寝ててくれ。
「・・・シロウ、あなたを愛している。」
残照なかで彼はそう俺に告げた。
深呼吸するアサシン。
「ショッカー軍団万歳ーーーー!!!!」
ちゅどーん!
諸手を挙げて爆発するアサシン。最後まで芸達者な奴。
ビッとポーズを決めるライダー。もうデパートの屋上で実演できるレベルだ。
「・・・惜しい男を亡くしました。」
相方がいなくなったのを心から悲しむライダー。
やがて最後の日の光も地上から消え、変わりに人工の灯かりが燈り出した。
「・・・帰るか。」
「はい、先輩。」
こうして、悪の怪人は正義の使者仮面ライダーの前に敗れ去った。
しかし油断するなライダー!
ゴルゴムの魔の手から世界を守れ!
「か・え・る・わ・よ・ラ・イ・ダー?」
イタタタ、やめろゴルゴム!
|