自分がアイドルに向いているなんて、思ったことはない。カラオケなんかで友だちに「凛って歌うまいよねー」とか言われたことはあるけど、そんなのでアイドルになれるんなら女子高生の大半はアイドルだ。
 じゃあなんで私がアイドルをしているのかというと、そんな特別な理由があるわけじゃない。偶然とか必然とか気まぐれとか、なんか色んなことが絡み合った結果で――まあそんなに面白い話でもないと思うので、気にしないでおいて欲しい。
 今重要なことは――いやまあそんなに重要ってわけでもないんだけど、とにかく私が一応アイドルをやっているということだ。


 アイドルとして活動中の渋谷凛。テレビやラジオにも出演できるようになり、CDだった出したけど。
 しかし彼女には悩みがあった。


「ほんと、愛想ないなあ……」


 写真撮影でうまく笑顔を作ることができない――アイドルとしては根本的で、そして致命的な問題。
 答えが出ない凛の前に現れたのは。


「おはようございまーす」
「か、楓さん。おはようございます」


 事務所の先輩である高垣楓その人だった。
 そして、楓さんは悩める凛の姿をみると、


「よし、それじゃあ行きましょうか」
「え? あの――」
「ほらほら、戸締まりは私がしておきますから凛さんは荷物をまとめて下さい」
「え? え?」
 私がうろたえている間に楓さんは事務所の中を見て回り、戸締まりの確認をしている。
「よし、大丈夫」
 そして満足げにそう言って頷くと、さも当然と言った風に私の手を取った。
「じゃあ、行きましょうか」
「え?」
「タクシー待ってますから」
「いつの間に!?」


 割と有無を言わせず、どこかへと連れて行く。
 タクシーに乗せられた凛は、どこに連れて行かれるのか――



「楓さんって、普段どんな風に撮影してるんですか?」
「そうですね……」
 そう前置きをすると、視線を少し上にやって一つ一つ思いだしながら話してくれる。
「基本的にはカメラマンの人の指示に従って……」
「はい」
「プロデューサーからのアドバイスも聞いて……」
「はい」
「焼き鳥食べたいなあとか考えてると、いつの間にか撮影が終わっています」
「はい?」
「以上です」
「……え?」
「何か凛さんと違うことがありましたか?」
「いや、違うことっていうか……」
 なんといえばいいか。ここはツッコミを入れないといけないところなんだろうか。
「焼き鳥……ですか?」
「あ、炙りイカだったりするときも」
「いえ、そこはどうでもいいです」
 ツッコミを入れないといけないところだったらしい。楓さん本人は至って真剣なんだけど、ここでツッコミを入れないと多分話が進まない。
「えっと、つまり。撮影中に焼き鳥とかのことを考えていると、笑顔になっていると」
「……そういうことなんでしょうか」
「いや、私に聞かれても」
「あ、でもこの間は家の蛍光灯が切れそうだったからその心配を」
「もういいです……」


 そして、凛の悩みは解決するのか。

 裸Yシャツ友の会がお送りする、アイドル二人のある夜の話。


 文章:右近  表紙:茉乃瀬桔梗

 タイトル:Illusory Monochrome
 本文:A5二段組 44ページ
 頒布予定価格:500円

 本文サンプル(pixiv


 そんなわけで、今回はモバマス本です。
 表紙を見るとアイドル二人の綺麗なお話に見えるかもしれませんが、そこはほら。俺の書く話だから……
 しぶりんと楓さんがぐだぐだ話す姿をご覧になりたい人は是非。
 あと、今回はサークル名詐欺とは言わせねえ。
 
 そんなわけで、8/12(月)は東ノ-43a「裸Yシャツ友の会」までどうぞ!
 おそらく暑さにやられてだるそうにしていると思います。
 書店委託は今のところ予定ありませんが、もしすることになったらまた後日告知と言うことで。

 他に、当日はオンリーとかサンクリで発行したロボノ本とか冬コミでちょっぴり残った化物語本も持ち込みます。
 あとは例によってMARさんの新刊を委託したり。
 もしかしたら当日までに変更あるかも知れませんが、八割方変わらないと思うのでよろしくお願いします。
 
 

【C84】裸Yシャツ友の会お品書き by 右近 on pixiv


 あと、ロボノ本2冊目の『天王寺フラウはヒキコモリをそつぎょうしようとしている!』は二日目に委託もします。
 俺も売り子してると思うので、お暇な人は東チ-33a「硝子の月」までお越し下さるといいと思います。

 とらのあなにて委託販売開始しました。夏コミ来られなかったという方はこちらからどうぞ。


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