人理再編・地球漂白という未曾有の危機を解決するために戦うカルデア、そして人類最後であり最新のマスター。
 彼らは汎人類史を取り戻すために異聞帯の王とそこに住まうサーヴァントたちと戦い続ける。
 カルデアの勝利とはすなわち異聞帯の消滅を意味しており、サーヴァントに限らずそこに住まう全ての存在も同様である。
 だがしかし、そんな戦いのあとでも何らかの理由でカルデアとそのマスターのために戦ってくれるサーヴァントも存在す る。
 存在するんだけど。


「で、なんで俺は拉致られてるのかな?」
「マスター、人の話を遮るものじゃないよ?」
「ごめん」

 異聞帯サーヴァントとも呼ばれることもある、異聞帯出身のサーヴァント・メリュジーヌは己がマスターに向 かって言葉を告げる。

「汎人類史のドラゴンは、巣に宝物を集めて抱いて過ごすらしいじゃないか」
「あー、うん。そうかな」
「ドラゴンは巣を作り、宝を抱いて眠る。いわば基本的ドラゴン権と言ってもいいんじゃないかな!」
「それでここがドラゴンの巣だってことはわかったけど、宝って言うのは」
「もちろんマスターだけど」

 メリュジーヌはマスターと共に生きるために汎人類史の文化を、汎人類史のゲームで学んだという。
 その行為はマスターにとっても喜ばしいことで、何か協力できることはないだろうかと問いかけるのだが。


「ちなみにそのゲーム、どこで体験したのかな」
「マスターの端末だけど」
「……え?」
「マスターの部屋にある端末」

 ちょっと意味がわからなかった。
 カルデアの端末はWindowsではないのだ。

「ドラゴンが結婚に備えて巣を作って侵入者を撃退するゲームだった」

 しかしマスターの困惑をよそに、境界の竜はとどまることを知らず加速していく。

「あのゲームのドラゴンは男だったけど、私が女な分マスターが男だから結婚生活の練習にも支障は」
「待って」
「財宝の次は夜の生活練習を」
「だから待て」

 果たしてマスターは、汎人類史の文化を学んだ境界の竜を御することはできるのか。
 そんな状況に、勿論この事態を把握しているカルデアからマスター奪還のためにサーヴァントが派遣される。

「僕だよ!」
「……誰?」
「えーっ、ひっどーい」
 メリュジーヌはやってきたサーヴァントを見て首をかしげ、侵入者を怒らせ地団駄を踏ませる。
 それは挑発でもなんでもなく、本当に思い出せないらしい。
 まあ、あれだ。こういうときは俺の出番だろう。
「どしたの? アストルフォ」
「僕だってパラディンだし、巨人は倒したことあるんだから。竜だってやってみせるよ。かかってこいってんだ!」

 マスターを拉致った異聞帯サーヴァントと、それに挑みに来た汎人類史のサーヴァント。
 二騎の戦いと交流は、いったい何を生み出すのか。

「君もマスターの端末の中を?」
「うん! めっちゃ楽しかった!」

 そしてマスターは何を失うのか。

「そういやマスター、男の娘もいけ――」
「メリュジーヌ、宝具解放。跡形もなく焼き払え」
「酷い! なんで!?」
「『なんで』じゃねえ」

 何も生み出さない予感しかしないが、気が向いたらその目で確かめてみて欲しい。



 文章:右近  表紙:紺堂(pixiv

 タイトル:巣作りメリュ子
 サイズ:A5二段組 本文40ページ
 頒布予定価格:500円

 本文サンプル:(pixiv


 コロナで開催されなかったり申し込み損ねたりなんだりで数年ぶりですが、なんとか本作りました。
 タイトルは知ってる人は知ってるぐらいのアレだと思いますが、内容はそんなに巣ドラしてません。期待してたらごめんな さい。
 申し込みの時にとりあえずでタイトルひねり出したら、何故かタイトルロゴが飛んできたから……。
 まあそんなわけでブランクに苦しみつつ本はできたので、8/14(日)東ヨ-10b「裸Yシャツ友の会」までお 願いします。

 今回は状況が状況だけに、色々読めなくて不安しかない。
「コミケ会場でボクと握手!」という懐かしネタで逃げることが出来ないのも辛い。

 例によって委託はコミケ終了後に残った奴を書店にお願いする 感じなんじゃないかと思われます。


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